Credit: Stefano Marzoli/iStock by Getty Images

今週のチャート

AIは経済成長をけん引し続けるために、電力をもっと必要とする

電力を大量に消費するこのテクノロジーには、電力供給を拡大し、代替エネルギー源のインセンティブを作り、価格の高騰を抑制するのに役立つ政策が必要

人工知能(AI)は、生産性と経済成長の新たな源であり、雇用と投資のあり方も変えている。

IMFの2025年4月の「世界経済見通し(WEO)」に盛り込まれたわれわれの最近の分析におけるシナリオによると、AIは世界の年間経済成長率の平均ペースを引き上げる可能性を秘めている。

しかし、AIが可能性を発揮するために必要となるデータセンターは、ますます多くの電力を要する。その結果として電力にかかる負担は、世界の電力需要に大きな影響を及ぼす。

石油輸出国機構(OPEC)による最新の通年推定値によると、世界のデータセンターにおける2023年の電力消費量は500テラワット時だった。それは、2015~19年の年間水準の2倍を超えたが、2030年までには3倍の1,500テラワット時になる可能性がある。

今週のグラフが示すように、データセンターで消費する電力だけでも、すでにドイツやフランスと同じくらいの量であり、2030年までに、電力消費量が世界第3位のインドに匹敵することになる。これはまた、電気自動車(EV)の消費量予測値を超え、2030年までにEVの1.5倍の電力を消費することになる。

AIは経済成長をけん引し続けるために、電力をもっと必要とする

データセンターのエネルギー消費量は、データセンターが世界で最も集中している米国で一番急速に増加している。マッキンゼーによる中程度の需要のシナリオに基づく予測によると、米国のサーバーファームに必要な電力は今後、3倍を超え、2030年までに600テラワット時を超える可能性がある。

クラウドに保存されたデータを保管するため、およびAIの検索クエリに応答するため、新しいデータセンターが続々と作られている。これは、急増する需要を満たす供給が十分あるようにするための効果的なエネルギー戦略を必要とする政策当局者にとって、課題の緊急性を強調する。

テクノロジー部門の電力需要の増加は全体的な供給を刺激し、供給の反応が十分にあれば、電力価格はわずかに上がる程度で済む。しかし、供給の反応が鈍ければ、コストがより大幅に上昇し、消費者や企業に打撃を与え、AI産業自体の成長を抑制する可能性もある。

現在のエネルギー政策の下では、AIによる電力需要の増加により、2025年から2030年の間に世界の温室効果ガス排出量が1.7ギガトン増加する可能性がある。これはイタリアの5年間のエネルギー関連排出量とほぼ同じ量である。

AIプラットフォームによるコンピューティングと電力の需要については、不確実性が大きい。ディープシークのような効率的なオープンソースAIモデルは、コンピューティングコストと電力需要を削減する。ただし、コストの削減によりAIの使用が増加し、よりエネルギー集約的な推論モデルが電力需要を増やすことになる。

電力需要に対する実質的な影響がまだ不明瞭であることから、エネルギー投資が遅れ、価格が上昇する可能性がある。政策当局者と企業は協力して、コストを最小限に抑えながらAIの潜在能力を最大限に発揮するようにしなければならない。複数のエネルギー源にインセンティブを与える政策を実施することで、電力供給を増やし、価格高騰を和らげ、排出量を抑制することができる。

ガンチメグ・ゴンプーレヴとアンドレア・ペスカトーリが寄稿したこのブログ 記事は、2025年4月「世界経済見通し」 に掲載された 一次産品特集と、電力に飢える:AIがどのようにエネルギー需要を動かすかと題するIMFワーキングペーパーに基づく。各国におけるAIの影響の詳細については、こちらのワーキングペーパーを参照してください。AIの世界的な影響: ギャップに注意